先日、阪急交通社「貸切公演」で『うたかたの恋』を観劇して参りました。
うたかたの恋は3回分のチケットをゲットしましたが全部「貸切」での観劇です。(内1回はコロナでお流れ)
最近、宝塚友の会の抽選になかなか当たりません。月組はA席が1枚だけ当たりましたが、次の宙組は1次2次とも撃沈!イープラスの貸切抽選に大急ぎで申し込みました。
貸切公演のお楽しみ
貸切公演のお楽しみは、公演中の「社名アドリブ」。
お芝居やショーの中で、スターさんが貸切主催の会社名をさりげなくセリフに織り込んだり、ショーで歌う曲の歌詞をちょこっと変えて歌ったりします。
「ジェイシービー」とかだと短いので言いやすいみたいですけど、先日の「ハンキュウコウツウシャ」は、なかなか苦しそうでした。
スターさんが苦しくもキザリながら会社名を言っているのを、客席全体でニコニコ(クスクス?)見守ります。バッチリ決まると大拍手~!!
「スミトモビザ!トモノカイ!キョウドウコウエン!」とかになると、言ってる本人が、言い終わる前に照れてしまったりして、「こっちが恥ずかしいわっ!」とツッコミたくなります(笑)
そして、もうひとつのお楽しみが終演後の「トップスターのご挨拶」。
『1公演分のチケット全席お買い上げいただいた、〇〇社様ならびにご観劇のお客様、誠にありがとうございます!』という感謝の言葉を主催者と観客に伝えるのです。
真冬の熱い挨拶
この終演後挨拶って、大体どのトップさんも言う事はほとんど同じなんですね。
①貸切公演にお越しくださりありがとうございます。 (拍手)
②今回の公演楽しんでいただけましたでしょうか?(大拍手)
③(今でしたら)まだまだ大変な時に、こうして劇場にお運びくださりありがとうございます(拍手)
④こうして公演させていただけることは『あたりまえではない』ということを胸に・・・
⑤〇組一同、心を合わせ・・・・・これからも日々精進してまいります。
⑥今後とも〇〇社様、ならびに宝塚歌劇、中でも〇組を何卒よろしく・・・(大拍手)
幕が下りてきて、トップさんが一生懸命に手を振ってくださり・・・
幕が完全に下り、終演のアナウンスの後、最後にもう一度拍手が高鳴って「おひらき」となります。
例えばひと公演で3回位観劇を希望するとして、友の会でチケットを1枚も入手できず、3回共が貸切公演だったりする場合が(今回みたいに)結構あるのですが、
柚香光さんは、終演後の挨拶にとても工夫されていていつも感心するのです。積極的に客席とお話をキャッチボールしようとしてくださるところがあるんですね。
先日も、最初に「お客様にお会いできてとても嬉しいです。」という意味のことをおっしゃって
柚香:お客様がニコッと微笑んで下さったり、手を振って下さったりするのが嬉しいです!(みたいなことを)
柚香:(劇場に)来られた時に雪は降っていましたか?(みたいなことを)
客席:うんうん(と、うなずく)
柚香:うわ~!お寒い中を本当にありがとうございます!(みたいなことを)
しばらく客席に向かって話しかけて下さいました。(詳しく覚えてなくてすみません。お話はもっともっと情熱的で長かったです)
何でもないお天気や交通事情のお話なのですが、それがかえって嬉しいのです。トップスターをとても身近に感じることが出来る瞬間ですね。
「客席」から手の届きそうな位置まで、トップスターが夢の世界から舞い降りて来て挨拶するのです。
通常公演にはない「特別感=付加価値」をトッピング?
今はコロナの関係で、貸切公演の幕間の『おたのしみ抽選会』などが中止されているので、トップスターの終演後挨拶はとても重要な意味を持っていると感じます。
別に終演後の挨拶が無かったとしても、公演さえキチンとしていたら怒り出す人はいないでしょう。それでもトップスターが、全力・汗だくで公演を終えた後に、わざわざまた舞台に戻って、「お忙しい中お越し下さりありがとうございました。」「もし雪が降っていましたら、どうぞお足元にお気をつけてお帰りください」と、言って下さったら決して悪い気はしないはずです。
以前は「ぴあ」「イープラス」などのイベント系サービス会社やクレジットカード会社などの『集客(自ブランドへの誘導)ビジネス』としての貸切公演はそれほど多くありませんでした。貸切公演の抽選権が欲しくて、クレジットカードを何枚も作っている宝塚ファンも多いと思います。
過去の貸切公演=初めて宝塚を観る人が多い。もしくは主催した会社の社員への福利厚生やお得意様のみが対象。チケットはご招待。そしてほとんどの場合1回のみの観劇。ということが多かったと思います。全国ツアー公演(昔で言う「地方公演」)の、お客さんと近い感じの客層だったのではないでしょうか。(今や全国ツアー公演も、場所によっては常連のお客さんばかりという事も多いですが・・・)
なので、終演後の挨拶の言葉は毎回同じでも特に差し支えなかった。
ところが、昨今のチケット入手難の状況下、ひとつの公演を貸切公演という形態で複数回観劇している人はかなりの人数になっていると想像します。
つまり、通常公演のお客さんと、最近の貸切公演のお客さんは『宝塚観劇の経験値』が、ほぼ同じ・・と申しますか、早い話が同じメンツなのです。だからお決まりの場所で拍手がちゃんと入ります。誰かのファンクラブに入っている人も当然含まれていますが、貸切公演の時はバラバラに座っているので、ごひいきへの拍手は若干遠慮がちですけれど。
「ビジネスで販売されている」貸切公演はチケット代金以外にも手数料やら送料やらで余分な経費が発生します。中には結構高額な手数料を乗せている貸切公演もあります。
通常料金でチケットを入手するのは今や至難のワザなので、保険の意味で、あるいは背に腹は代えられず、心にひっかかりを感じながら貸切公演の抽選に応募するのです。その抽選ですら外れる事があるのでその時の『敗北感』たるや半端ないです。(この慢性的なチケット難=チケット争奪戦状態を維持する事が劇団の戦略なのでしょうが、長くなるので別の機会に書きたいと思います。)
手数料の痛みを、少しでも・・ほんの少しでも解消させる働きをしているのが「社名アドリブ」であったり「おたのしみ抽選会」「終演後挨拶」なのかなと感じています。(相当ひねくれてますな)「付加価値」を付けて、少しでも割高感を薄めておきたいという事ですね。
本来ならこの付加価値はチケットを売ることで利益を得ている、劇団や主宰企業が「付加」するべきなのですが、「おたのしみ抽選会」がコロナで中止されている今、スターの「アドリブ」、トップスターの「終演後挨拶」に、責任を全部あずけてしまっている感があります。(「おたのしみ抽選会」が有ったところで、大概の場合『トップおよびトップ娘役のサイン色紙』だったりするので結局は生徒がせっせと色紙にサインをする訳ですが。)
そんな訳ですから、挨拶は型通りの定番挨拶でも全然構わない訳です。客席側もそこのところは理解しているので『うんうん。今日もよく頑張ったね。ありがとね。』と、大拍手ですよ。
それなのに、柚香光さんてば、お客さんを抱きしめんばかりにアレヤコレヤと『どれだけ私たち生徒がお客様に感謝しているか』を伝えてくださる訳です。彼女特有の声色で。静かに・・・ささやくように。私は後ろの方の席でしたが、自分に言ってもらったような気がして、ひねくれ者の私でも率直に嬉しかったです。
もちろん彼女は、私のようにひねくれて「付加価値つけなくちゃ」とか「手数料がどうこう」とか、余計な事は考えてはいないと思います。劇団から『レイ!今度の(貸切公演)終演後に挨拶しよう』と言われたら、マリーのように「はい!喜んで!どこででも!」という具合でしょう。
それほどまでに先日の挨拶は本当に素晴らしく、精一杯お客様をもてなしたい、熱い想いを伝えたいという強い気持ちが伝わりました。
大羽根と共に組を背負うトップスターだからこその責任感と、常にひとりの人間として『純度の高い』状態であろうとする「柚香光」の心意気に触れられたことが、何よりの「付加価値」であったのだと学んだ、「THE 花組貸切公演:うたかたの恋」でございました。